2015年からの相続税増税に備えて読んでおきたい本
「やってはいけない相続対策」は、元国税調査官である著者が究極の節税対策を伝えるという目的で書いた相続税についての本です。
出版は2014年6月なのですが、2015年から開始された相続税増税に備えるための知識をまとめて説明をするという構成がとられています。
この相続税増税はかなり大きな幅となっており、金額的な割合が高まっただけでなくそれまで相続税を節税するためにとられていた一般的な方法をとることができなくなってしまっています。
相続税対策はかなり難しいもので、生半可な知識に従って対策をしてしまったがために実際に相続が発生してから面倒なことになったという人もかなりいるようです。
この本ではしばしば世の中に見られている「間違った相続税対策」を正すとともに、今回の増税のポイントはどこにあるかということをわかりやすくまとめてくれています。
それほど緊急に相続税対策が必要であるという人でなくても、今後の増税の傾向をつかむことができるのでぜひ若い人にも読んでもらいたい一冊です。
相続税増税で変わった点とは?
平成27年1月1日から施行されることになった相続税増税のもっとも大きなポイントは「基礎控除額の減少」です。
以前までの相続税では基礎控除額として5000万円に法定相続人数✕1000万円部分を控除するということになっていたのですが、改正により3000万円に法定相続人数✕600万円までが控除範囲となりました。
この数字を見ただけでもかなり控除対象が減らされたということがわかるところで、実質的には基礎控除は4割減ということになります。
本の中で具体的に説明されているモデルケースで説明すると配偶者と子供二人が相続する場合それまで8000万円まで税金がかからなかったところ、4800万円以上は税金がかかるという計算になってしまいます。
そこで多くの企業が「現金資産ではなく不動産にしておく方が節税になる」というふうに一大キャンペーンを打って顧客に不動産経営を持ち込むことが行われているわけですが、この作者はそうした口車に乗ることの危険性をはっきり指摘しています。
確かに不動産購入を行っていくことは節税対策になる場合もありますが、にわか知識でただ闇雲に資産を不動産にしているだけではむしろ相続税どころか資産を大きく目減りさせてしまうことにもなってしまいます。
具体的な相談をプロの法律家に持ちかける前にまず基本的な知識を備えるという意味ではこの本の役割はとても重要なものと言えます。
増税の本当の狙いがわかれば節税ができる
相続税が大幅に増税されるということはかなり広くメディアで伝えられてきており、中にはかなり不安を煽るような書き方をしているところもありました。
しかし実際の運用状況を見てみると、この増税によって大きな影響を受けることになったのはもともと多くの資産を持つ富裕層であり一般の人の相続に与える影響はごく微小にとどまっています。
作者である大村大次郎氏が最も気にしているのがそうした扇情的な広告宣伝に惑わされずにしっかり確実な対策をしていくということの重要性です。
相続税の面倒なところは申請をしてから内容の不備が見つかった場合、その追徴分の連絡が1年以上が経過したような「忘れた頃」に来るということです。
元国税調査官という作者はそうした相続税の現場のリアルな様子を伝えてくれているので、実際に我が身に起きたらどうなるかということを知るためにも役立ちます。