離婚後の相続の考え方
相続において最も強い立場として保障を受けるのが配偶者です。
民法第890条において配偶者(夫または妻)は常に相続人となるとはっきり記載されており、それをもとにその他の直系卑属や直系尊属への相続割合が決定していくことになります。
しかしながら、それはあくまでも法的な「婚姻」の手続きを行い、入籍がある状態のときのみ発生することです。
言い換えれば離婚により婚姻関係が解消していれば、その元妻や元夫とは完全に他人ということになりますので、遺言などがなければ相続財産を取得することはできません。
離婚の効果は離婚届が受理された瞬間から発生するので、離婚が成立したらその時からお互いの相続権は消失します。
もちろん婚姻関係の長さは全く関係なく、20年以上連れ添った夫婦でも1日のみの婚姻関係だった夫婦でも離婚届が受理されれば同じように他人として扱われるのです。
子どもがいる場合
一方で、どういった手続きがあっても相続権が消失することがないのが子供です。
夫婦が離婚をして再婚をしていない場合、元夫・元妻ともに第一順位の相続権は婚姻中に生まれた子供ということになります。
離婚後に父親・母親いずれと生活をしていても、相続には関係なく第一順位です。
再婚をしてもこの相続順位は変わらず、再婚後新しい夫・妻と子供が出産された場合であっても、元の婚姻関係で子供として戸籍に記載した人には相続権がなくなることはありません。
なお、平成25年9月5日より民法第900条第4号に記載されていた非嫡出子の相続分の記載は削除されています。
それまでは婚姻関係にない関係で生まれた子供(未婚で母親が出産した後、事実上の父親が認知をした場合)は非嫡出子として、婚姻関係で生まれた子供より相続分が1/2になるという規定がありました。
民法が改正されたことにより、平成25年9月5日以降に開始した相続については嫡出子か非嫡出子であるかにかかわらず同じく「子」としての法定相続分を受けることができるようになったのです。
ちなみに婚姻関係以外で生まれた子供については相続分がありますが、その子供を出産した母親は事実上の父親の相続権がありません。
離婚と相続についてのまとめ
相続で争いが起こりやすい事例として、この子供の問題があります。
子供が幼い時期に離婚をした夫婦の場合、その後母親が親権を得てほぼ父親とは絶縁状態のまま生育されていくということがよくあります。
父親にしてみればほとんど顔も見ていない子供に財産の大部分が相続されることになりますので、もし新たな婚姻関係や子供があるという場合は、遺言書などにより一定の制限をつけていくことが必要です。
逆に父親が亡くなってから戸籍に認知をした子供がいたというようなこともあるので、戸籍についてはきちんと調べておく方がよいでしょう。