内縁関係と相続の関係、トラブル事例
大日本帝国憲法の家族制度の基本的な「家父長制度」も既にすっかり過去のものとなり、夫婦を世帯単位とする家族の形が平成の時代で一般化しました。
さらに現代では婚姻による家族単位も当たり前のものではなくなってきており、内縁関係など戸籍を同一にしない世帯も増えてきています。
いわゆる「内縁の妻」と言われる関係は、古くは結婚をしたくてもできない愛人関係や不倫関係によるものというイメージがありました。
しかしそれ以外にも、例えばお互いかつては別のパートナーと結婚をしていたが、高齢により死別をしたという二人が生活を同一にするために同居をする、というような関係も見られています。
他にも、婚姻届を出して戸籍が変更になってしまうと姓が変わってしまうのでそれを嫌って籍を入れなかったり、パートナーとの関係を対等にしたいがために事実婚という形を取ることもあるでしょう。
さらにはLGBTと言われる同性のパートナーとの生活を望む人も表に出るようになっており、家族の形として婚姻関係によらないものの方が多くなる、というときもいずれ訪れるのではないかと思われます。
そうした家族の形が変化していく一方で、法律はあくまでも「婚姻」や「家」を基本にして構成されています。
そのためいくら長年生計を同一にしたパートナーがいても、それは法律における婚姻関係のような相続権を得ることができないケースが見られたのです。
生前はそうしたことを気にせず生活できていたのに、片方が先に亡くなった途端財産のほとんどを顔も見たことがなかった親族にごっそり持っていかれてしまった、というような事例もあります。
相続させるには
法律として明文化されているわけではありませんが、現在の流れとして婚姻届などの手続き面よりも事実関係を重視する方向になってきています。
事実婚として長年一緒に連れ添ったという実績があれば、婚姻届の有無にかかわらず相続権を一部認めようという判決も出ました。
しかしそれも確実なものではなく、一緒に生活をしてきたということを証明しなければならないなど、非常にハードルは高くなっています。
事実婚など内縁関係にある人がいる場合、成り行きに任せるのではなく、生前より財産管理をしっかり行っていくということが大切になるでしょう。
自分の死後パートナーが経済的に困窮しないようにするためには、まずお互いの口座に財産を分割しておいたり、あるいは生前贈与という形で名義の書き換えをしておくということが対策となります。
ただし生前贈与についても、不用意に行ってしまうと相続が発生したときに法定相続人から返還を求められることもありますので、できるだけ弁護士など第三者を通して確実に行っていくようにしましょう。